大学入試共通テストから学ぶ美術検定「知識・情報の活用問題」対策ー2021年度「倫理」で出題された日本美術史の問題

日本美術史

解答・解説

来迎図を題材にした、末法思想・浄土教思想に関する問題です。図は国宝《阿弥陀二十五菩薩来迎図(あみだにじゅうごぼさつらいこうず)》(「早来迎」)(鎌倉時代、知恩院所蔵)です。これは来迎図であり、臨終の際に阿弥陀如来が死者を極楽浄土に迎えに来る様子を描いたものです。右下の往生者を阿弥陀如来と菩薩達が山から飛雲に乗って降りてくる様子が描かれています。「早来迎(はやらいこう)」の別名を持ち、飛雲がたなびく描写と対角線の構図で来迎のスピード感を表現しています。往生者の前の机には共感が置かれ、右上の空中に宝楼閣(ほうろうかく)が描き込まれている事から、最上の往生とされる上品上生(じょうぼんじょうしょう)を表しています。背景は桜や滝のある山水画で、大和絵のような風情を感じさせます。

平安時代後期、悟りも修行もなくただ仏陀の教えが説かれるのみの乱れた救済のない時代になると考える末法思想が広まりました。それを背景に阿弥陀如来を信じて死後の極楽往生を願う浄土教が人々の心を強く捉えました。来迎図は浄土教が広まるにつれて盛んに描かれるようになり、臨終の儀礼にも用いられるようになりました。

【写真の出典】
《阿弥陀二十五菩薩来迎図》 絹本著色、145.1×154.5cm、鎌倉時代(13~14世紀)、知恩院、国宝

京都国立博物館
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【解答】③

【難易度】★★☆☆☆

【解説】本図は来迎図ですから、中心に描かれる仏は阿弥陀如来です。阿弥陀如来は西方極楽浄土にあって全ての人々を救済するとされています。

【解答】①

【難易度】★★☆☆☆

【解説】ノート中の空欄Yには来世での極楽往生を願う浄土信仰を描いた来迎図の説明が入り、それに合致するのは①の「右下の屋敷内の人物を極楽往生に導く」です。

×② 現世利益は仏に祈る事によりこの世でのいい事を求める考え方です。密教の加持祈祷などは現世利益に該当します。浄土信仰は②や③のような現世利益を否定しています。

×③ 病期平癒は薬師如来に祈願する事による現世利益が有名です。これも現世利益ですから浄土信仰とは異なる考え方です。

×④ 法華経の教えは天台宗や日蓮宗で重視されています。浄土教系の宗派では阿弥陀経などが重視されます。

【解答】③

【難易度】★★★★☆

【解説】

×① 釈迦入滅後の500年間(または1000年間)は、仏の教え(教)とそれに基づく修行(行)に加え、悟り(証)もある正法とされていました。 

×② 正法の後の1000年間(または500年間)は、教・行はありますが、証のない像法とされていました。 

○③ 像法の後の1万年は、教のみで、行・証のない末法とされていました。日本では平安時代末期の1052年から末法になると信じられていました。

×④ 教・行・証のいずれもない世界は記されていません。末法の説明として間違えやすいので要注意です。

【解答】③

【難易度】★★★★☆

【解説】

×① これは「辺角の景」の説明です。南宋の馬遠らは風景の一部を片隅に描き、余白を大きく利用する事で、鑑賞者の想像力に訴えかけました。この絵では中央に阿弥陀如来が描かれ、余白は少ないです。

×② これは曼荼羅の説明です。曼荼羅とは「円」を表すサンスクリット語が起源であり、仏の完全な世界を表現しています。

×③ この絵で描かれている自然は、日本的な風情を大和絵的な技法を用いて描いています。様式的な描き方ですから写実的とは言えませんし、山水の彩色も部分的です。

○④ この絵が「早来迎」と言われる所以です。山岳を駆け下りる飛雲がたなびくスピード感が素早い往生を表現しています。

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