理系出身の社会人大学院生が学芸員資格を目指す理由
このブログを読んでくださっている方なら、私が芸術に強い関心を持っている事は既にご存じかもしれません。美術作品を鑑賞するだけでなく、より専門的かつ学問的な視点から美術を捉えたい、美術に関わる仕事が就きたいという思いは中学・高校時代から抱いており、美術系の研究者や学芸員になりたいという夢も心にありました。
しかし、当時は不況の影響もあり、将来の安定を考えて理系の大学へ進学しました。そのため、大学では博物館に関連する科目が開設されていませんでした。卒業後も仕事に追われる日々が続き、通信制大学で学芸員資格を取得する余裕もありませんでした。
そんな中、社会人として働きながら総合大学の大学院に進学した事で状況が大きく変わりました。大学院生でも他学部の科目を履修可能である事を知り、嘗ての夢に再び火が付きました。
学芸員資格を取得する事で、ブログでもより専門的な視点から信頼性の高い情報を発信出来るようになる事は、読者の皆様にとっても有益な事だと思います。
また、美術検定の実践問題では博物館に関連する科目の基礎的な内容が頻繁に出題されます。特に1級では、博物館学のレポートや学芸員採用試験の小論文でも問われるような論述問題が出題されます。
今後、美術検定1級の受検を視野に入れている私にとって、博物館学の知識を体系的に習得する事は、試験対策としても非常に有効なのではないかと考えています。
社会人として理系の博士課程を専攻しながら学芸員資格の取得も目指すというのは、かなり珍しいケースかもしれません。だからこそ、自身の経験が同じように学芸員に興味を持つ社会人大学院生の参考になればと思い、この記事を執筆する事にしました。
学芸員資格の一般的な取得方法と私の選択
学芸員とは、博物館資料の収集、保管、展示及び調査研究その他これと関連する事業を行う「博物館法」に定められた、博物館におかれる専門的職員です。学芸員資格を得るには、主に次の方法があります。
- 大学で文部科学省令の定める博物館に関連する科目を履修する。
- 文部科学省が行う資格認定試験に合格する。
文化庁のサイトにあるフローチャートが分かりやすいので転載します。「学芸員になる方法① 大学等で科目を履修する」の青線が私が満たしている項目、赤枠が学芸員資格取得のために必要な項目です。

2.の資格認定試験では、 筆記試験(博物館関連8科目)に合格し、さらに博物館での実務経験を1年以上積むことで資格が認定されます。但し、試験は今後2年に1度の開催となり受験機会が限られるほか、博物館での採用競争も非常に厳しいため、社会人にとっては非現実的なルートです。
既に学士を取得している私にとって最も現実的な方法は、1.の大学で「博物館に関する科目」として定められた9科目19単位分を履修する事です。「博物館に関する科目」は次の通りです。
| 科目名 | 単位数 |
| 生涯学習概論 | 2 |
| 博物館概論 | 2 |
| 博物館経営論 | 2 |
| 博物館資料論 | 2 |
| 博物館資料保存論 | 2 |
| 博物館展示論 | 2 |
| 博物館教育論 | 2 |
| 博物館情報・メディア論 | 2 |
| 博物館実習 | 3 |
この科目群には、博物館概論・資料論・展示論などの座学に加え、博物館実習が含まれます。特に博物館実習は実際の博物館や学内施設での実地研修を伴うため履修のハードルが高く、最もネックになる科目です。
例えば、通信制大学として広く知られる放送大学では、博物館概論や教育論など座学の科目は開講されていますが、博物館実習は開講されていません。そのため、放送大学のみで学芸員資格を取得する事は出来ず、実習科目を履修可能な他大学との連携や編入が必要になります。
一方で、通信制大学の中には座学と実習をまとめて履修出来る課程を設けている大学もあり、一般的な社会人にとっては現実的な選択肢となり得ます。
社会人大学院生が学芸員資格を取得する道程
仕事と大学院での研究と並行して、学部開講の博物館関連科目を履修するのは決して容易ではありません。
まずは職場の上司や指導教官の理解と承諾を得て、教務課とも相談しながら履修計画を立てました。
私の場合、業務や研究への支障を最小限にしながら履修出来るのは各学期3科目が限度でした。現在は夕方から夜にかけて開講される科目を中心に履修していますが、今後午前中の科目を受講する際には有給休暇を取得する必要があります。
そして、最大の難関はやはり博物館実習です。本来であれば座学を一通り修了してから履修するのが理想ですが、社会人大学院生としては座学が修了していなくても、タイミングを逃さず履修出来る時にエントリーする方が現実的です。実習は受講者数に制限が設けられている事が多く、定員オーバーになれば次年度以降に再チャレンジせざるを得ない可能性もあります。
もし今後仕事や研究が忙しくなって座学が履修出来なくなったとしても、座学は放送大学で受講可能ですが、博物館実習だけはそういう訳にもいかないため大学院在学中に確実に履修しておきたいと考えています。
博物館実習は基本的に学内実習(2単位)と館園実習(1単位)を履修しますが、それらが組み合わさった3単位の実習もあります。学期中や長期休暇に集中講義として開講される事が多く、平日昼間に博物館での研修が組まれるプランなど様々です。社会人にとっては勤務との両立が難しいため、履修可能な実習パターンを慎重に選ぶ必要があります。また、実習のスケジュールやカリキュラムは博物館毎に異なるため、事前の情報収集が欠かせません。不審者みたいに思われたかもしれませんが、私は講義で隣になった学生さんに話しかけ、他の講義や実習について教えてもらったりもしました。
私の場合、幸い職場の有給休暇を消化する必要があったため、まず今学期は冬休みに博物館で1週間の館園実習を履修する事にしました。更に、来年度は休日に開講される学内実習を選択する予定でいます。これが仕事への影響を最も小さく出来ると考えています。
資格取得後の展望
学芸員資格を取得する事で、美術に関する知識を体系的に深めるだけでなく、美術検定1級の受験にも大きなアドバンテージとなります。1級の実践問題では博物館科目の基礎的内容が出題されます。論述問題でも学芸員採用試験のような問題が出題されるため、学芸員を目指す実践的な学びがそのまま試験対策に繋がります。
社会人として理系の博士課程を専攻しながら学芸員資格を目指すというのは、かなり珍しいケースかもしれません。だからこそ、同じように資格取得を目指す社会人大学院生の参考になればと思っています。


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