美術検定2級では例年東洋美術史に関する問題が3問程度出題されます。範囲が広く、観念的で難しい印象を持つ人も多い東洋美術史ですが、実は適切に対策すれば短時間で安定した得点源に出来るタイパに優れた分野でもあります。今回は美術検定2級東洋美術史の傾向と対策についてお伝えします。
美術検定2級「東洋美術」の傾向と出題分野
一般的に東洋美術史は中国、朝鮮、インド、西アジア、東南アジアなどの異なる地域の幅広い時代を対象とするので、覚えるべき内容が多い分野です。しかし、美術検定で主に出題される分野は公式テキスト『続 西洋・日本美術史の基本』(以下『続・基本テキスト』)に掲載されている古代インド仏教美術史、宋代を中心とする中国絵画史など日本美術史と関係が深い範囲に絞る事が出来ます。定量的に捉えても、『続・基本テキスト』では約8ページ分、『2級問題集』でも14問と限られたしか扱いがありません。率直に言えば、美術検定の東洋美術史は顧愷之や閻立本も掲載されていないような、東洋美術史としての体系性がない不十分な内容ですが、西洋美術史並みの知識が問われても負担が大きいので、受検者としては現状で助かるとも言えます。
加えて、西洋美術史や現代美術ではかなりマニアックな問題も混じっているのに対して、東洋美術史では問題集や過去問と類似した標準的な問題が出題され、難問はありません。
頻出分野は次の4項目です。
1. 中国絵画史
北宋・南宋を中心とする中国絵画史が例年1,2問出題され、東洋美術史の大部分を占めます。北宋の郭熙、南宋の夏珪が頻出であり、日本美術史でも中国絵画が日本美術へ与えた影響を問う問題が良く出題されています。加えて、北宋の郭熙が理論化した「三遠」や、明代の董其昌が提唱した「南北二宗論」など、絵画理論も必須の知識です。
2. 古代インド・中国・朝鮮の仏教美術史
紀元前5世紀のインドで仏教が誕生してから日本に伝来する過程において、インド・中国・朝鮮で花開いた仏教美術が例年1問程度出題されています。ガンダーラ美術とグプタ様式、北魏の石窟寺院、朝鮮半島の美術と日本への影響の出題頻度が高いです。
3. シルクロードと国際交流
唐代には、ササン朝ベルシアなどとシルクロードを通じた文化の伝播があり、国際色豊かな文化が花咲きました。ペルシアからは正倉院宝物《白瑠璃碗》に代表されるカットガラスが伝来し、唐三彩や染織品のデザインに影響が見られます。
4. 中国・朝鮮の陶磁史
「工芸・デザイン」とも内容が重複します。中国では宋代に汝窯などの青磁や定窯の白磁が全盛を迎えました。元代の景徳鎮窯で焼かれた青花(染付)や明代の五彩へと発展しました。 朝鮮では高麗時代に独自の象嵌技法を用いた高麗青磁が完成しました。朝鮮王朝時代には、白磁が盛んに制作されました。時代と窯、様式をセットで知っておく必要があります。
美術検定2級「東洋美術」の対策
1. テキストと問題集を完璧にマスターする
美術検定における東洋美術史の出題範囲は『続・基本テキスト』の8ページと2級問題集の14問です。この14問は繰り返し解き、完璧にマスターしてしまいましょう。
公式テキストの記述が不十分だと感じたら、『すぐわかる東洋の美術 改訂版 絵画・仏像・やきもの&アジアの暮らしと美術』(東京美術)が簡潔かつ体系的に東洋美術史をまとめています。全編カラーである上に、初学者にも分かりやすい記述になっています。
西洋美術史や現代美術など他分野の学習が十分に進んでいて、東洋美術史に関心がある人には、『増補新装 カラー版 東洋美術史』(美術出版社)などで体系的に学ぶのもおすすめです。
2. 時代と美術様式、特徴をセットで覚える
美術検定では、時代(王朝)と美術様式の特徴を組み合わせた文の正誤を判定する問題が良く出題されています。まずは「クシャン朝で栄えたガンダーラ美術ではギリシア風の仏像が制作された」、「北宋の汝窯では雨過天青と称される青磁が作られた」など、時代(王朝)と美術様式、特徴をセットにして覚えます。そして、ヘレニズム様式のガンダーラ様式から純インド風のグプタ様式など、様式の変化やその背景、他地域への影響を意識して知識を整理するのがおすすめです。
3. 日本美術史との繋がりを意識する
古来より、日本は大陸の文化を摂取して自らの文化に昇華させてきました。東洋美術史を勉強する時は、日本美術史との影響関係を意識して関連付けると効率的に覚えられます。
4. テストゼミで追加の問題演習をこなす
改訂前の問題集では17問収載されていた事を考えると問題演習量の不足が心配されます。弊ブログでは削減分を補うべくテストゼミ形式で東洋美術史の問題を補完していきたいと考えています。
まとめ
美術検定の東洋美術史は、範囲が狭く標準的な出題であり、短い勉強時間で得点を安定させやすい分野です。美術検定2級全体の戦略としても、ここを得点源にする事で他分野の難問に余裕を持って取り組めます。美術検定の全体的な勉強方法については「美術検定2級の勉強方法」を参考にしてください。


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